No.107  2001. 3. 30
三重大学附属図書館報「学塔」

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Lib-Frontier(リブ・フロンティア)オープン!

 附属図書館1階フロアの情報検索コーナーが、より広く、より使いやすく、よりアクティブな空間「Lib-Frontier(リブ・フロンティア)」として生まれ変わりました。2月2日には、矢谷学長をお招きしてオープニングセレモニーを行ったのち、学長裁量経費の予算配分を受けて新たに設置した10台のパーソナル・コンピュータや可搬式のプロジェクター等を活用した情報検索講習会を実施しました。
(Lib-Frontierについては、こちらの記事もご覧ください)

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三重大学附属図書館所蔵「伊勢木造(こつくり)城下町絵図写」について

教育学部 藤田達生

 確か一昨年のことだったように記憶しているが、附属図書館のロビーで館蔵資料の公開がおこなわれていた。たまたま陳列ケースをのぞき込んだ私であったが、現物が大きいので写真展示していた、ある古地図から目が離せなくなってしまった。
 その地(ち・下端部分をさす)中央には、「勢洲壱志郡木造之図、天正十二(1584年)落居之頃」という主題が記されている。天正12年といえば、羽柴秀吉の命令で蒲生氏郷をはじめとする諸大名が、大挙して木造城(所在地は、久居市木造町)を攻撃した年である。当時伊勢を領有していたのは、秀吉と天下人の座をかけて激突した織田信雄(信長次男)であり、その持城のひとつが当城であった。
 おそらく30分以上は、この古地図をながめていたと思う。見た瞬間、天正12年からさほど隔たっていない時期に、現地調査にもとづいて描いた原絵図を、写したものであろうと判断したが、城郭や城下町内外が実にリアルに描かれていること、またいたる所に記された書き込みのおもしろさに、すっかり惹かれてしまったのだ。
 城郭については、三層天守と隅櫓のみえる本丸、その南にふたつの櫓がある二の丸、それらを取り囲んで三の丸にあたる重臣団居住区が描かれている。このなかには、柘植五郎左衛門屋敷のように、築地塀で囲まれ二層櫓をもつものまでみえる。
 城下町は、市場と寺社そして家臣団屋敷から構成されている。
 市場には、「月ニ六日市場」と、市立ち(営業)の日を注記しており、数件の在家が描かれている。その北には、市場の守護神であろうと思われる牛頭(ごず)天王社がみえる。
 寺社は、非常に多い。注目されるのは、絵図のほぼ中央に描かれている「光正屋敷」である。この周囲には、堀が巡らされている。注記として「寺中以前六ケ寺」との記載があり、落城以前には多くの子院を擁していたことがわかる。さらに注記によると、「元木造開発ノ城屋敷」とされ、現地調査によって、北・西の二面に大規模な土塁が残存することが確認できた。また南の正面にあたる位置に描かれた引接(いんじょう)寺は、現在も存在し、本絵図ときわめて類似する絵図を所蔵されている(4月以降、附属図書館で展示予定)。
 家臣団屋敷は、近世の城下町のそれのように、一個所にまとまっているのではなく、散在していることが中世的でおもしろい。
 以上、概観しただけでも興味が尽きない。本絵図については、今後、院生・学生とともに調査を進め、その価値を検討していきたい。乞うご期待。
(ふじた・たつお)

(全体図)
全体図

(中央部分の拡大図はここをクリックしてください)

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「道具」になってきたコンピュータ

工学部 舟橋 啓

 ここ数年、コンピュータは速度的に爆発的な成長を見せ、一般家庭に浸透した感がある。コンピュータが今のように一般家庭に普及するとは 15年以上前、私が小学生時代に初めてコンピュータに触れたときにはまったく思いもつかなかった。その頃のコンピュータはマイコンと呼ばれ、オペレーティングシステムはおろか、ソフトウェアもわずかしか無い、非常に無愛想なものだった。また、ソフトウェアを実行しようと思うと起動するまでに数十分は待たされた。今では考えられない代物である。
 しかし、私はその新しいおもちゃに夢中になった。商品として売られているソフトウェアはわずかしかなかったため、 自分でプログラムを書いてソフトウェア(ゲームのようなものが多かったが)を作っていた。今まで遊んできたようなおもちゃにはない、創造力をかき立てるまったく新しい遊びを手にいれた私はコンピュータの虜になった。その頃のコンピュータの情報はすべてが公開されており、回路図までが雑誌に載っていたような時代で、欲しい情報は簡単に手に入り、ユーザーは好きなようにコンピュータをいじることができた。
 もちろん、この様な状態では一般には普及しなかった。ユーザーにある一定以上の知識を要求するようなものだったため、敷居が高かった。ユーザーは無愛想な、そして難解なコンピュータをたくみに操作していた。しかし時代は変わり、コンピュータの難解な部分をいかにうまく隠すかと言うことに成功したコンピュータが市場に現れた。インターネットの爆発的な普及とともに、コンピュータは一家に一台のものとなりつつある。もちろん、これは喜ぶべきことで、私もコンピュータの市場が大きくなった恩恵を多いに受けている。
 現在のコンピュータはグラフィカルで、直感的に操作ができるようなシステムになっている。初めて使う人にもわかりやすく、キーボードの操作が不馴れな人でもある程度のことは楽しめる、 人間に優しいものとなってきた。しかし、コンピュータの仕組みは15年前と根本的にはまったく変っておらず、 中身はむしろ複雑になっている。 ただ、わかりやすいインターフェースをかぶせて簡単なように見せているのである。コンピュータの中身、仕組みを意識させないよう、うまくブラックボックス化してユーザに優しい「道具」としてコンピュータをとらえることは決して間違いではない。
 しかし、今年から本学でコンピュータサイエンスを教える立場になった私は、コンピュータサイエンスの教育という点では弊害があることに気付いた。
 最近のコンピュータは買ってきた当日から多くのことができるが、ソフトウェア(プログラム)を作る環境は用意されていない。使い始めたときからコンピュータは既にブラックボックス化された「道具」であり、コンピュータの中身を知る必要性、きっかけがないため、研究対象としてコンピュータについて知っておくべき知識を得る機会が以前より圧倒的に少ないのである。もちろん、 自分のコンピュータでプログラムを組んでいたような学生も中にはいるが、 コンピュータの仕組みハードウェアの知識が豊富な学生は以前より圧倒的に少なくなっている。
 今後もコンピュータはますます便利になっていくだろう。そして同時にブラックボックス化もますます進むだろう。そのような中で、私が初めてコンピュータを操作したときに感じた「創造力をかきたてる楽しさ」をうまく学生に伝えることができれば、と思っている。

(ふなはし・あきら)

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電子ジャーナルについて(下)

 昨年の2月に(上)を掲載してから、今回の(下)の掲載にいたるまで種々の都合により1年余りが経過し、その間に大学図書館における電子ジャーナルをめぐる環境にも変化が見られたため、当初計画していた(下)の内容 ― なんらかの費用が発生するコマーシャルベースの電子ジャーナルに対して、アクセスフリーで且つピアレビュー誌である学協会の電子ジャーナルのみを利用した場合の有効性や可能性を探ってみること ― もそれなりの意義はあるものの、図書館の使命(昭和34年制定の三重大学附属図書館規程第2条には、「附属図書館は、図書を収集管理し、本学の職員及び学生の利用に供することを目的とする。」とあり、今日的表現に改めれば「附属図書館は、図書、雑誌及び電子的情報等の情報資源の収集・整理・加工・提供・保存等の専門的業務を通じ、大学の教育・研究・社会的使命を支援することを目的とする。」となろうか。)に照らせば、教育・研究に有用な情報(無料でアクセス可能なデータベースや電子ジャーナルも含めて)の収集・整理も同時進行でやっていく必要性があることは勿論だが、現段階では、まずは正式な契約行為が必要な商業誌の整備の方が優先されることは言うまでもなく、こちらの方の観点からまとめることに変更した。
 そのような環境の変化の第一というのが、国の会計法令の解釈・適用の変化である。平成12年12月25日付け事務連絡文書による文部(科学)省からの通知により、従来は役務提供契約として後金払いしか認められていなかったネットワーク系の電子出版物もパッケージ系の電子媒体資料と同様、前金払いが可能になったことで、電子ジャーナルが冊子体の雑誌のおまけという形態から独立の逐次刊行物(雑誌)として認知されることになったのである。
 これには、当然、国立大学図書館協議会などの尽力によるところも大きいのだろうが、今後の電子ジャーナル導入についてのあり方も又、コンソーシアムの形成規模やコンソーシアム形態の契約からもたらされるマイナス面などの問題点や、多数対個(利用者集団 vs. 1企業)の契約をめぐる交渉が自由競争の観点から問題がないのか、に疑問が若干残るものの、現在、同協議会の電子ジャーナルタスクフォースで検討されているコンソーシアムによるライセンス契約という方向が、ベンダーとの交渉の結果如何にもよるが地方の大学としては得るところが大きい選択肢の一つである。
 コンソーシアムに関しての疑問については、国大図協電子ジャーナルタスクフォースでの検討結果についても近々報告があるやに聞いているし、欧米でのコンソーシアムについても ICOLC (International Coalition of Library Consortia)の声明があり、コンソーシアムについての問題点や図書館が抱えている課題等はそこで明らかにされている。
 先に、地方の大学としては得るところが大きい選択肢の一つである、と言ったが、これも又、ベンダーとの交渉如何では、画餅に終わる可能性があり、少なくとも三重大学として残しておきたいタイトルは何であるかをはっきりとさせておく必要がある。そして、全体を調整する部署としては附属図書館運営委員会が最も相応しいと思われるが、図書館事務部にもそれなりの活動をすることが求められることは当然である。
 環境の変化の第2というのは、既定の事実であり、変化とまでは言えないかも知れないが、大学評価・学位授与機構による外部評価が試行的とは言え、平成13年度から始まることである。評価は、各評価対象機関が設定した目的・目標に沿って行われる、ということで、本学でも三重大学の理念・目的がこの程決定され、各部局においては目標が作成されつつある。
 目的と目標がどう違うのか辞書的な解釈ではよくわからないところがあるが、理念・目的・目標をそれぞれ英語のmission statement、goal、objective の訳語と考えれば何となくわかったような気になる。そうすると、冒頭にあげた附属図書館規程第2条の「附属図書館は、・・・ を目的とする。」にある「目的」とは到達点(goal)であり、そこに至るまでの具体的な戦略・戦術が目標と考えてよさそうである。
 利用者のために存在し、利用者のために活動する図書館という理念(使命)・目的に対する目標 ― 事務的な検討課題・将来構想のようなものは別にして、これまで外部から評価されるという形で目的と連動した具体的な目標を外に向かって表明してこなかった、という意味で新たになのだが ― を新たに掲げていくことになるのは、外部評価のためだけでなく、自己の活動の舵取りや指針となる具体的な設定を、特に従来は、各部局が各々の部局内での調整を図るのみで、図書館から見れば他律的に納まるところ(?)に納まっていた学術雑誌の収集という面で、持つことが出来ると言うこと、そして、その点において図書館運営委員会が全学の調整役を果たすという本来の姿をとらなければならないことは、積極的に働きかけた結果ではなく、図書館としてはむしろ僥倖としなければなるまい。
 以上の2つの環境の変化により、二重の意味において、図書館は調整役とならざるを得なくなっている。
 電子ジャーナルの導入については、他のいくつかの大学とコンソーシアムを組んで進めていくことになるとしても、前述したように、学内での問題点や三重大学としての姿勢を固めた上でないと、コンソーシアムに参加する利点が生かせなくなる恐れがある。現在の雑誌購入方法で、早急に解決しておかなければならない問題としては、(1)冊子体のみの場合は、購読部局や講座が費用を負担し、主に購読部局に配架していたが、購読部局以外の研究室から容易にアクセスできる電子ジャーナルと抱き合わせになったときの費用負担方法、(2)電子媒体のみの契約をするジャーナルの場合、タイトルの選定と購読費用の分担方法、の2点が考えられる。両方とも費用についてであるが、この点について考えを固めておかないと先に進めないこともあり、学内でのコンセンサスを形成しておく必要がある。
 タスクフォースでの契約書の雛形づくりが、2002年の契約に間に合うように進められているが、エルゼビアを始めとする5社との契約を雛形にそって、仮に他大学との調整を抜きにして単独で行うにしても、平成13年度の夏から秋にかけての時間はあまりにも短く、従来のタイムスケジュール通りでいけば、調整のための時間は実質2ケ月間しか残されていないことになる。2ケ月では現実問題として不可能と言わざるを得ない。最初の年は、重複タイトルの解消のみにとどめるとしても、部局・講座への購入希望調査をする段階から調整を図らないと日程的には間に合わない。
 三重大学附属図書館においても、過去何回かの電子ジャーナルの試行版を導入しているので、各研究室においても電子ジャーナルについては既に充分理解が深まっているはずだが、研究分野によってはそれほど利用が活発でないところもあり、購入希望調査実施までに今一度評価しておかれることをお願いしたい。

(M.H.)

※現在ご利用いただける電子ジャーナルは、附属図書館ホームページの「電子ジャーナルリンク集」http://www.lib.mie-u.ac.jp/EJ/Ejournal.html に掲載しています。

カット1

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情報リテラシー教育の充実をめざして

 附属図書館では、これまで、図書館の資料や設備の利用ガイダンスを中心に利用者教育を実施してきました。しかし、インターネットの爆発的な普及や電子化された資料の増加に伴い、従来型の利用者教育では不十分な状況が生じています。コンピュータやネットワークを活用した学術情報の収集(読み書き)能力の向上を目指す“情報リテラシー教育”を充実させることが重要な課題です。
 このため、平成12年度には、インターネットや各種データベースを活用して必要な文献を効率的に入手するための情報検索講習会を試行的に実施しました。また、これまで手薄だった留学生の皆さんに対するガイダンスに情報リテラシー教育を加味した講習会を開催しました。さらに、表紙ページでご紹介したとおり、情報リテラシー教育の環境整備のために、情報検索コーナーを改装し、「Lib-Frontier(リブ・フロンティア)」という愛称で再生しました。
 Lib-Frontierは、単なる機器の更新にとどまらず、情報リテラシー教育を強化するための三つのコンセプトに基づいて運営しています。

(1)インターネットを利用した学習環境
 最新のWindows2000を搭載したパソコン10台を加えた16台の学習用ネットワーク端末と、OPACやMAGAZINEPLUS、DNA for Library、First Searchなどのデータベースの検索用端末8台が利用できます。学習用の端末では、ワープロや表計算ソフトを利用してレポートの作成を行ったり、インターネット上の様々な資源にアクセスして情報収集を行うことができます。また、学生用メールサーバを使用した電子メールの利用も可能です。

(2)情報リテラシー支援の場
 可動式のスクリーンとプロジェクターを設置することにより、普段は学習用に開放している端末を活用して講習会を実施します。受講者は、実際にネットワーク端末を操作しながら、情報検索の実習を行うことが可能です。また、オープンスペースで開催することにより、気軽に参加できる雰囲気を提供し、受講者以外の来館者に対する啓蒙効果も期待できると考えています。

(3)情報アクセスのためのバリアフリー
 留学生の皆さんから要望の高かった英語版のWindows2000とMS Officeを導入しました。また、新しく導入した学習用端末は、母国語でインターネットを利用できるように、OSレベルでマルチリンガルに対応しています。さらに、タッチ式のディスプレイを活用して、学外からの利用者の方も気軽にOPAC等の検索を行うことができる端末を整備する計画です。

 来年度は、以上のような視点に基づき、情報検索講習会等の開催頻度や種類、内容の充実を図り、本格的な情報リテラシー教育を展開していきたいと考えています。

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 新年度のガイダンスや講習会の開催日程等については、附属図書館ホームページの情報リテラシー教育専用ページ「Information Literacy News」http://www.lib.mie-u.ac.jp/ILN/iln.htmlでご案内します。

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著書寄贈

朴 恵淑(共著)人文学部教授、長屋 祐一(共著)生物資源学部助手
 わたしたちの学校は「まちの大気環境測定局」. 三重県人権問題研究所, 2000.8
柴田 正美(分担執筆)人文学部教授
 学校図書館メディアの構成. 全国学校図書館協議会, 2000.7(学校図書館学 ; 2)
 学習指導と学校図書館. 全国学校図書館協議会, 2000.7(学校図書館学 ; 3)
キャサリーン・M・ダジンスキー(著)生物資源学部特別研究員
 Meeting dolphins : my adventures in the sea. National Geographic Soc., 2000
吉岡 基(共著)生物資源学部助教授
 イルカとウミガメ : 海を旅する動物のいま. 岩波書店, 2000.11(現代日本生物誌 ; 4)
妹尾 允史(共著)工学部教授
 工学基礎 量子力学. 共立出版, 2000.11
妹尾 允史(著)工学部教授
 電子机械控制入門. 北京 : 科学出版社, 2000.1
 机電一体化電子学入門. 北京 : 科学出版社, 2000.1

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主要日誌

10月2日(月)
 第3回附属図書館運営委員会開催
10月18日(水)
 東海北陸地区公共図書館研究集会(於:三重県総合文化センター)河谷参考調査係長、後藤学術情報係員出席
11月8日(水)
 東海地区大学図書館協議会運営委員会(於:名古屋大学)本橋情報管理課長出席
11月13日(月)〜15日(水)
 京都電子図書館国際会議(於:京都大学)後藤学術情報係員出席
11月22日(水)
 三重県大学図書館連絡会(於:三重県立看護大学)望月情報サービス課長、萩野専門員出席
11月29日(水)
 第4回附属図書館運営委員会開催
12月4日(月)
 大学図書館における電子図書館の講習会(於:静岡大学)望月情報サービス課長、樋本資料運用係員出席
12月7日(木)〜8日(金)
 国立大学図書館協議会シンポジウム(於:名古屋大学)川添資料運用係長、河谷参考調査係長出席
12月13日(水)
 東海地区国立大学図書館協議会事務連絡会(於:名古屋大学)吉田事務部長、本橋情報管理課長、望月情報サービス課長出席
1月18日(木)
 東海地区大学図書館協議会研修会(於:愛知教育大学)杉田参考調査係員出席
1月25日(木)
 国立大学附属図書館事務部長会議(於:徳島大学)吉田事務部長出席

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三重大学附属図書館報 No.107  2001年3月30日 三重大学附属図書館発行
〒514-8507 津市上浜町1515 TEL 059-232-1211(代) FAX 059-231-9086