新連載 Digital LIVE Contents-Infrastructure-Literacy

 オンラインデータベースや電子ジャーナルなどの導入により、電子図書館サービスは刻々と進化し続けています。新しい情報をタイムリーにご紹介し、研究・教育・学習に活用していただくため、新企画として本号より「Digital LIVE」を連載いたします。
 第1回目は、三重大学に学内LANが導入された初期の頃からコンピュータやネットワークを利用してこられた教育学部の冨樫先生に、研究や教育でのネットワークサービスの活用事例についてご紹介いただきます。

ネットワークを用いた文献検索、取得、管理・利用について

教育学部 冨 樫 健 二

はじめに

 自分の研究テーマに関する先端情報を得たり、指導する学生に対し適切な論文情報を提供するためには、最新の文献をチェックし、動向をつかんでおく必要がある。二次情報(文献データベース)の検索結果に基づき、一次情報(必要な論文)の所在情報を調べ、自分で取得できる場所にあるのか、学外へ依頼する必要があるのかを判断し、最終的に現物が手に入る。取得された論文は精読され、自分なりに構築したデータベースで管理・ストックされ、自分、もしくは学生が論文を執筆するときに利用されて行く。本稿では教育・研究活動において基盤をなす文献検索や文献取得環境などについて、特にオンラインサービスの観点から筆者の経験を交えてご紹介したい。

文献検索

 一昔前では、発刊から数週間遅れて自分の講座・研究室や図書館の新着雑誌の棚に届く雑誌の現物を見たり、情報処理センターでサービスされているMedlineや医学部図書館でサービスされているCurrent Contents、医学中央雑誌CDなどを定期的に検索し、内容を知る必要があった。しかし、インターネットの普及とともに自分の分野でメジャーとされる学術雑誌のホームページが次々に開設され、今では自分のメールアドレスを登録しておくと、最新号の発刊とともに目次の内容をメールで送ってくれるサービスや、著者名、キーワード等を登録しておくと1週間に1度、自動的にそのキーワードでデータベースを検索してくれ、結果をメールで送ってくれるなどのサービスが出てきている。このように、設定さえしておけば自らが積極的に情報を探しに行かなくてもメールを待っているだけで最新の情報が入手できるようになり、学会誌に関する情報であれば、発行元の地域とほぼ同時期に得られるようになってきている。
 文献二次情報データベースではNCBIの提供しているPubMedとISI社が提供しているWeb of Science(WoS)が有名である。PubMedはフリーなので多くの方が利用していると思われるが、WoSの特徴としては、論文間の引用関係を検索、分析できる点にある。例えば、自分の書いた論文を誰が引用しているのかや、被引用回数(何本の論文に引用されているか)など自分の研究の国際的な認知度を確認できたり、自分の研究テーマに関連している文献を検索し、その文献が使っている引用文献情報からそのテーマの流れや展開などが時系列に沿って簡単に調べられる点にある。本学でも導入が検討されているが、情報基盤整備の観点からぜひ実現して欲しいと考えている。

Web of Scienceの引用文献検索画面

図-1 Web of Scienceの引用文献検索画面

 日本語文献二次情報データベースでは附属図書館で利用できるMAGAZINE PLUSや医学部図書館で契約している医学中央雑誌、国立情報学研究所(NII)がサービスしているNACSIS-IR、科学技術振興事業団のEnjoy JOISなどが有名である。

文献の取得

 さて、文献情報が入手できれば、次はその論文の所在情報を確認することになる。最近のPubMedやWoSでは検索結果からフルテキスト(オンラインジャーナル)サイトにリンクしている場合が多くなってきており、三重大学が契約していたり、フリーで提供しているサイトではAdobe社が開発したPDF形式の文献ファイルを直接ダウンロードできる(契約していなくても1年程度経った文献であれば、フリーでアクセスできる可能性が高い)。ご存じの通り、このPDFファイルはどんな機種のコンピュータからプリントアウトしても結果は冊子体のものとほぼ同じになる。また文字情報も有していることからPDF全文検索システム(SherlockやPDFinderなど)を用いれば複数のPDFファイルの中から希望する文字列を抜き出すこともできる。その他、フルテキストの文献が得られる場所としてはNIIのNACSIS-ELS(電子図書館)もあげられる。ここでは日本の主な学協会が発行する学術雑誌がスキャニングされ、画像の形で登録されている。ユーザーは無料、もしくはページあたり数十円〜数百円で各論文をプリントアウトすることができる。

電子ジャーナルリンク集のページ

図-2 電子ジャーナルリンク集のページ

 PDFファイルで欲しい文献が得られたり、画像として即座にプリントアウトできた場合は幸いであるが、それ以外の場合は附属図書館が提供しているOPACを利用して、文献の所在情報を調べる。OPACに雑誌名を入力すれば三重大学内の所蔵状況やどこに配架されているのかがわかる。OPACで検索をした結果、三重大学内で取得できる場合は自分でコピーを取り、現物を手にすることになる。一方、OPACによって三重大学内では取得できないと判断された場合は学外依頼をすることとなる。これについても一昔前までは学外依頼用の用紙に、取得して欲しい文献情報を記入し、附属図書館へ学内便で送る必要があったが、学内LANの構築や附属図書館職員のご尽力とともにオンライン文献複写申し込みができるようになり、タイムラグがかなり減らせるようになった。

オンライン文献複写申込み画面

図-3 オンライン文献複写申込み画面

文献の管理、利用

 筆者の場合、取得した文献はISI社が提供しているEndNoteというソフトを用いて管理している。このソフトウェアは論文の最後の引用文献リストを作るときに威力を発揮する。論文を書きながら文献を入れたいところにEndNoteデータベースから文献情報をコピー&ペーストする。論文を書き終えた後、ある操作をすると論文中に自動的に文献の肩番号を付けてくれ、最後の文献リストをアルファベット順や引用順などにして作成してくれる。PubMedや医学中央雑誌などデータベースの検索結果を読み込む機能もあり、文献情報を手入力する必要もないため正確な文献データベースを構築することができる。EndNote3.0からは標準情報検索プロトコルであるZ39.50を用いているデータベースに対し直接検索ができるようになっているのでEndNote上からMedlineを直接検索することもできる。
 筆者の研究室では研究室メンバーが使うことのできるファイルサーバにこのEndNoteデータベースが入れてあり、研究室内にある文献について各自が検索できるようにしてある。
 各文献の入っているフォルダには番号が振られ、その番号をEndNoteデータベースの方にも入力しておくことにより、検索した文献がどのフォルダに入っているのかも容易に分かるようになっている。学生は必要な文献があれば、まずこのデータベースをチェックすることにより、同じ文献を二重にコピーしてしまうことを防いだり、短時間にある程度の文献を収集できるようにしている。

EndNoteによる文献管理

図-4 EndNoteによる文献管理

おわりに

 インターネットがなかった頃には必要な文献を図書館などで検索し、学外から取り寄せるのに早くて数週間、遅いと1ヶ月以上かかることがしばしばあった。現在の環境では思いついたら机上ですぐ印刷して読むことができたり、学外依頼をしても遅くとも3週間以内には手元に届くようになってきている。図書館や情報処理センターが中心となって行われる情報インフラの整備は我々の教育・研究方法に対し大きな変革をもたらし、目的の遂行を迅速化、深遠化してくれる。今後もこうした整備を期待するとともに、我々ユーザーも道具を使いこなしながら成果を上げて行ければと思う次第である。

(とがし・けんじ)

Digital LIVE 予告編
 平成14年より、電子図書館サービスが大幅に拡充される予定です。次号以降の「Digital LIVE」にもご期待ください。
  ◆引用文献データベース“Web of Science(自然科学分野)”導入決定!
  ◆電子ジャーナルのタイトル数が約10倍に!

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