政治の裏を読む

人文学部  岩 本 美 砂 子

 7月29日の参議院議員選挙では、三重県は全国的な激戦区として、暑くて熱い闘いが演じられた。この原稿が活字になる頃に「小泉改革」がどうなっているかはわからないが、ここではイマの日本政治のウラが読める、今年出た本を3冊紹介しよう。
 1冊目は、飯島勲著「代議士秘書」(講談社文庫)。著者は小泉純一郎衆議院議員の秘書を30年も務めた人物で、首相の身代わりの密使になったりする、側近中の側近である。
 この本は、国会と自民党本部のある「永田町」の常識のおかしさをつくだけでなく、1993年以前の中選挙区制(一選挙区から3〜5人を選ぶのに、有権者は一人にしか投票できなかった、日本独特の選挙制度)の下で、自民党候補者同士がぶつかりあい、相手候補を蹴落とすために使った秘策が暴露されている。小泉は衆議院議員選挙制度を現行の小選挙区比例代表並立制に変えるのには反対だったが、ここまでやらなければならなかった中選挙区制度が廃止され、同一政党候補者間の争いがなくなったことは、日本政治にとってよかったと思わせる。別のところでマスコミ対策にも触れており、「小泉ブーム」の仕掛け人の発想がわかる本としても面白い。
 第2は、小林照幸著「政治家やめます」(毎日新聞社)。 旧愛知2区選出の衆議院議員久野忠治の長男で、二世議員となった統一郎の10年間の代議士生活を描いたものである。二世議員の大量発生というのも日本独特の現象だが、祖父以来3代目の小泉首相のように、永田町に住み続けられる後継ぎばかりではない。
 統一郎は、政治家になるつもりはなかったのに、父の引退に際し、他の人では地元がまとまらないと強引に担ぎ出された。当選後も議員宿舎から国会に地下鉄で通い、一本500円のネクタイを締め続けるフツーすぎる人物である。彼を悩ませたのは、1992年の竹下派の分裂、翌年の自民党の分裂(橋本・小渕派の一員として残留した)や、彼自身旧愛知2区でのライバル候補のいる公明党を激しく批判し続けてきたのに、1999年に自民党が公明党と連立したことだった。さらに、新愛知8区内での市長選挙における支持関係のもつれが、辞任決意への追い打ちとなった。「普通の人には政治は無理か?」と考えさせる。
 第3は、國栖治雄「女たちの反乱」(生産性出版)。インターネットと勝手連が正面に出た、今年3月の千葉県知事選挙での堂本暁子陣営(無党派・当選)の裏事情を描いている。長野・栃木・千葉と続いたニュータイプの知事の当選は、自民党に森首相をあきらめさせ、小泉首相を登場させる危機感を招いた。一見アマチュア風に見えながら老練な堂本陣営の作戦と、学生さんたちと同年齢の「選挙で燃えた茶パツの若者」の情熱とがわかる本である。

(いわもと・みさこ)
【紹介図書】

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