連載(3) Digital LIVE Contents-Infrastructure-Literacy

2002年1月の電子ジャーナル本格サービス開始から半年が経過しました。この間の利用統計を見ると、全文表示をした数が約3倍に増加しており、サービスが定着してきたことが伺えます。"Digital Live"連載第3弾は、学術雑誌をめぐる出版社や学会の動向、雑誌のImpact Factor(引用影響度※)との関係などについて、医学部の保富先生にご寄稿いただきました。

オンラインジャーナル(電子ジャーナル)について

医学部 保富康宏

 昨今図書、特に学術雑誌の新刊がめざましくその中には発行してすぐにImpact Factor (IF)が非常に高くなる雑誌も多く含まれるようになっている。一方、出版社では雑誌本体の売れ行きはそれほど良くなく、この業界も新たな戦略を考えてきている。その中で近年著しく利用者が増加しているのがオンラインジャーナル(電子ジャーナル)である。利用者としては図書館等の施設に出向く必要がなく検索と同時に見られるという利点、さらにはWeb of Science等との併用により、単なる論文検索だけでなく研究や特許事業等を進める上においても机上で計画できるという点は非常に優れていると思われる。さらに、図書蔵書は基本的には日々増加するものであり、施設等のハード面を考えればこれも非常に大きな利点となる。一方これらオンラインジャーナルは非常に高価であり、出版社が提供するものはこちらが不必要と思っているものと組合わさって(いわゆる抱き合わせ)いたり、オンラインとともに雑誌本体の定期購読を要求したりするものもある。こうなると先ほどの施設のハード面の利点も消えてしまう。近年批判的な意見も多々あるがIFというものが非常に大きな意味を持ち出し、雑誌の裏表紙等にはその雑誌のIFやその業界雑誌の内でIFが何位であるということが書かれているものも多くなってきている。IFと雑誌の購読数は比例しているそうで、そのために出版社もIFを意識している側面もある。一般に(当然全てには当てはまらないが)同一の研究領域では学会誌の方が商業誌よりIFが高く、そのために既存の雑誌が新たに学会誌となることが出版社では最も簡単にIFと購読部数の上昇につながるようである。もう一つはできるだけ研究レベルの高い研究者(研究グループ)の論文を載せることである。そのためにはそのような研究者に多くの機会に読んでもらい投稿を促すことになる。オンラインジャーナルはこのような場合でも非常に大きな意味を持っており、アメリカのいわゆる名門大学(ハーバードやエールの様な)では自国のみならず世界中広く大手出版社から無償でオンラインジャーナルの供給を受けている。これはオンラインジャーナルが広まる前は無償提供を申し出ても施設等のスペースの問題から拒否されていたものがオンラインジャーナルでこの様なことが受けいれられるようになってきた。これも今まで出版社がなし得なかったことが可能となったオンラインジャーナルを用いた新たな流れであろう。
 以上思いつくままオンラインジャーナルについて述べてきた。本学でもこの問題は何度も関係者で論じられてきているが、オンラインジャーナルを取り巻く環境たとえば上述したWeb of Science等の動向で今後変化して行く可能性は大きい。いずれにしろ利用者としては利便性が一番重要であることはいうまでもない。

(やすとみ・やすひろ)
※Impact Factor (IF) :ある雑誌に掲載された論文の被引用度による雑誌の評価

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