三重大学に博物館があった

三重大学に博物館があった

農林博物館の誕生と消滅

   大正13年に開校した三重高等農林学校では、開校直後に記念展覧会を行ったのをはじめ、早くから標本・模型類や農林産物の展示が行われていました。
   開校と同年に竣工した特別展示室では農林業の産物の展示が行われ、昭和4年には大標本室が整備されました。こうした、資料類の充実をもとに、昭和11年には、農林博物館が整備されました。
   初代館長(昭和11ー21)の大町文衛(明治31、1898-昭和48、1973)は紀行文学で知られる大町桂月(けいげつ)の次男。東京出身。東京帝大卒。昭和8年に三重高等農林学校に着任し、教授として動物学、昆虫学、実験遺伝学を講じました。
   続く2代館長(昭和21ー22)は岩田吉人、3代館長(昭和22-26)は伏谷伊一。
   三重大学に継承後の博物館は付属施設としての位置付けはなく、館長は置かれませんでした。農学部博物館、陳列室の名称が学報に見られますが、次第に実態を失って昭和40年には建物も取り壊しを受けました。

 

開校記念展覧会(大正13年11月)
【 開校記念展覧会 】
(大正13年11月)
開校記念展覧会(農業土木科陳列)
【 開校記念展覧会 】
(農業土木科陳列)
開校記念展覧会(林学科陳列)
【 開校記念展覧会 】
(林学科陳列)

 

農林博物館の沿革

大正13.11
三重高等農林学校開校
祝賀行事として模型、標本、農林産物を展示
大正13.12
篤志家の寄付金により、木造2階建の特別研究室竣工2階を農林産物の展示室とする
昭和4 6室の大標本室を整備、公開
昭和11.2 木造2階建の農林博物館竣工、陳列品1,798種、7,822点
昭和11.6 初代館長に大町文衛発令
昭和19 三重高等農林学校、三重農林専門学校と改称
昭和21.6 2代館長に岩田吉人発令
昭和22.12 3代館長に伏谷伊一発令
昭和24 三重大学発足、三重農林専門学校と併存
昭和26.3 三重農林専門学校廃止
昭和26.11 昭和天皇来学、農林博物館を視察
昭和40.7 新校舎建設のため農林博物館取り壊し、展示品は研究室に分散配置

 

特別研究室(大正13年竣工)
【 特別研究室 】(大正13年竣工)
標本室(昭和4年整備)
【 標本室 】(昭和4年整備)

 

農林博物館の整備

農林博物館規定
(昭和十一年六月十三日制定)

第一條       
本校農林博物館ハ農林ニ関スル各種ノ標本模型類ヲ陳列保管シ本校教育資料ト為スト共ニ職員及学生ノ研究ニ資シ?セテ一般公衆ノ観覧ニ供ス      

第二條       
標本模型類ハ之ヲ農業、農業土木、林業、農山村副業、満蒙及其ノ他ノ数部ニ分チ更ニ之ヲ類別シ整理陳列ス      
開校記念展覧会(大正13年11月) 農林博物館ゴム印
  【 農林博物館前景と当時のゴム印 】

 

農業土木学科陳列
【 農業土木学科陳列 】
林学科陳列
【 林学科陳列 】

 

三重高等農林学校配置図
【 三重高等農林学校配置図(部分) 】  -『三重高等農林学校一覧』、昭和11年 -

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天覧の陳列品

陳列品名 説明者
1.大豆の種間雑種(栽培大豆と野生大豆の種間雑種) 農学部講師 有門博樹
2.根瘤菌の発育過程 農学部助教授 藤田時雄
3.コオロギ類昆虫の染色体 農学部教授 大町文衛
4.キノコ類の香気と成分 農学部講師 岩出亥之助
5.淡水くらげ 学芸学部助教授 榊原慎吾
6.大杉谷国有林の森林生態 農学部助教授 矢頭献一
7.降雨平均強度計 農学部助教授 八幡俊雄
8.Neurospora sitophila 菌のカロチン生産とその利用 農学部講師 赤城盛郎
9.湿田土地利用の一事例 農学部教授 小柳彌
10.伊勢菊 農学部長・教授 藤村次郎
11.伊勢撫子 学芸学部助教授 富野耕治
12.伊勢花菖蒲 同上
13.アッサム茶 農学部教授 中野清作
14.デリス 学長 岡出幸生
15.さとうきび 同上
16.やむばのかみのけ(珍しい地衣類の一種) 学芸学部教授 及川公平

 

農林博物館陳列品の現状

農林博物館で収蔵陳列されていた標本模型類は、昭和40年の建物取り壊し後、研究室に分散配置されました。しかし、農学部と水産学部の統合に伴う生物資 源学部の新校舎整備(平成7年完了)のため、標本資料類は再度移動や処分を余儀なくされ、一部は、レーモンドホール(旧水産食堂)へ移動されました。
現在、レーモンドホールには、農林博物館に由来する資料のほか、農学部、水産学部に由来する資料が集積しています。これらの保存状態は良好とはいえず、 劣化破損しているものや、伝来、内容の明確でないものも多く含まれています。これらの調査と保存、活用が今後の大きな課題となっています。

陳列品の現状1 陳列品の現状2
陳列品の現状3 陳列品の現状4
陳列品の現状5 陳列品の現状6

 

レーモンドホールの陳列品について

現在、レーモンドホールで収蔵展示を行っている資料は、主として模型類で、 旧三重県立大学・三重大学水産学部に由来する水産系資料群、旧三重高等農林学校・三重大学農学部に由来する農林系資料群に大別することができます。

水産学部は漁業、製造、増殖の3科構成でした。また、漁業学科卒業生が航海士・船長となるための海技課程がありました。 水産系資料で目立つのは、海技課程の教育に使用した各種の船舶模型類で、旧県立大学当時の練習船大勢丸の模型も含まれています。

農林系資料の多くは「農林博物館」旧蔵品と推測されます。三重大学の前身の一つである、三重高等農林学校(大正13年開校)では、 開校当初から標本模型類を収集し、教育研究に活用するとともに、その公開を行っています。その充実をもとに、 昭和11年には「農林博物館」を開設し、農業、農業土木、林業、農山村副業、満蒙、その他の部門構成で展示を行っていました。 しかし、戦時下の休館を経て、戦後も本格的な再開には至らず、昭和40年には博物館建物も取り壊しを受けました。

これら資料類の保存状況は良好とはいえず、劣化破損しているものも見受けられます。また、伝来や内容の明確でないものも多く、 これら資料の調査と保存、活用が今後の大きな課題となっています。陳列品について、ご存じのことは博学連携推進室(電話059-231-9072)に ご教示をお願いいたします。

 

陳列資料1 陳列資料2
陳列資料3 陳列資料4
陳列資料5 陳列資料6