三重大学人文学部フォーラム in いなべ 2003:要旨

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第3回要旨
子どもが書いた詩・子どものための詩

伊藤隆司


子どもは風の子だ、といわれますが、いくら温暖な三重県でも、冬はやっぱり寒いのです。「あしがガタガタする。体はぞっとする。今日は、さむいなあ。チャ イムがなって、しょくいん室から、先生が出て来る。先生のふくそうは、ながそで、ながずぼん。でも、わたしたちは、はんそで、はんずぼん。先生はずる い。」『児童文詩集三重の子』に紹介された小学校3年生の詩の一部です。こうした「子どものまなざし」に、どきっとさせられるのは私だけでしょうか。一般 に、子どもの書いた詩は「児童詩」と呼ばれ、子どものために大人が書いた詩は「少年詩」と呼ばれます。今回は、それらを紹介しながら、子どもらしい表現 や、ものの見方の魅力に迫りたいと思います。最近の子どもたちは、いったい何を見つめ、何を感じているのでしょうか。児童詩や少年詩は、常識で水ぶくれし て、心も体も堅くなってしまった大人たちに、きっと何かを教えてくれるにちがいありません。

 

第4回要旨
ドイツ人は本当に勤勉か

工藤康弘

ドイツ人はまじめで、勤勉で、時間に正確で、質実剛健で、頑固で…… これでは息苦しくなってしまいますね。他方、これでもかというほどたっぷり休暇をと り、バカンスに出かけるのもドイツ人です。私たちがドイツ人に持っているイメージはある程度あたっていますが、「期待」に反するドイツ人もいます。今回の 報告ではドイツ人の勤勉さを検証するだけでなく、ドイツのさまざまな側面を紹介します。たとえば必ずしも金髪で青い目の人ばかりではないこと、老人が住み やすいこと、身障者にやさしいこと、日本のマンガにとても人気があること、女性が社会で大いに活躍していること、他人同士が簡単に会話できること(日本で は相手の年齢や身分がわからないと話しづらいですね)、さらには路上生活者、大学の授業風景、ゴミ問題等々をテーマに考えています。こうした異文化に接す ることで、日本における私たちの生活を再認識することができればと思います。

 

 

第5回要旨
猪名部氏と東大寺大仏建立

山中 章

東大寺大仏は員弁郡の人々の指導協力なくして完成はしませんでした。大仏殿の造営を担当した名工猪名部百世(いなべのももよ)は伊賀国の出身と伝えられて います。百世は東大寺造営のために設けられた建設部局(造東大寺司)に大工として所属し、完成後、地方豪族としては最高位の外従五位下をもらい、その後、 伊勢国の国司(県知事)にまでなりました。なぜ彼が大仏建立に用いられたのでしょうか。ヒントは猪名部という氏名と大安寺とに隠されています。現在の員弁 の文字は、713年に改められたもので、本来は猪名部郡だったのでしょう。猪名部は木工技術に長けた人々の集団で、中央の猪名部氏に率いられていました。 文献史料にも有能な大工として度々登場し、古くからその技術が知られ、伊勢国員弁郡には猪名部姓の人々が多く知られています。なぜ伊勢国や伊賀国に猪名部 氏が多いのでしょうか、本話はその謎を最新の発掘調査成果や古代文献の再検討から解こうとする試みです。
『一遍聖絵』『遊行上人縁起絵』をてがかりに、熊野と伊勢との違い、中世社会における「ケガレ」の問題などについて考えていきたいと思います。

 

第6回要旨
食事のためのおもしろ栄養

樋廻博重

今、食文化の著しい変貌により、健全な食文化の育成が叫ばれ始めています。特に若い世代の食事、食生活に変化が生じています。これからの時代を乗り切って いくためには食生活を見直さなくてはなりません。ここで登場するのが、ごく最近に唱えられ始めた〈食育〉という言葉です。これまでは知育・徳育・体育が人 間の豊かな身体・心を形成する、言い換えれば、健全な心と体をつくるのに重要欠くべからざるものとして考えられ、教育されてきました。しかしながら、昨 今、これらに加えて、〈食育〉の必要性が論じられて参り、文部科学省などの行政機関も動き始め、学校や保育園での給食における〈食育〉が始まりつつありま す。では何故今、〈食育〉が必要とされているのでしょうか。
それは、食生活を含めた生活習慣の乱れからくる生活習慣病(成人病)や健全な心の発達の妨げが、さまざまな心身の不調につながるからです。